大手電機メーカー勤務の管理人が、エアコン業界の闇?を解説します。家電の中で最も高額で、複数必要な商品なので、高校で古文・漢文を習うより、この話を習った方がよかったと思います。
6畳用も8畳用も同じ製品です!
家庭用エアコンは、部屋の広さに応じて細かくラインアップが備えられています。6畳用と8畳用を比較すると、後者の方が高くて性能が良い(=強力である)代わりに値段が高いと思ってしまいます。しかし、6畳用も8畳用も全く同じ構造で性能もほぼ同じなのです。メーカーの都合でラインナップを細分化して、消費者をカモろうとしているので、注意喚起です。
エアコンの性能の確認の仕方
日立の上位モデルのXJシリーズの6畳用と8畳用のカタログの値を確認してみましょう。
カタログの示しているものを簡単に解説します。
”能力”とは定格能力(中間的な能力のこと)を示していて、標準的な6畳の部屋を暖める能力を示しています。6畳用のエアコンならどこのメーカーでもほぼ同じ値になります。6畳用と8畳用で違うのは当たり前です。
消費電力は、”能力”の熱や冷気を生み出すときに必要な消費電力です。これは最新や上位機種程低い値になりやすいです。
注目したいのは、最大能力です。能力の下に、0.3~6.1と記載され、6畳用も8畳用も最大能力が6.1kWになっています。最大能力というのは、フルパワーなので、最初に電源入れたからどれだけ早く設定温度に近づけるかの能力です。6畳用も8畳用も全く同じ最大能力なのです。つまり、まったく同じ性能です。冷房の最大能力だけ3%だけ8畳用の方が大きいですが、メーカーが苦し紛れでチューニングした結果と捉えてください。
6畳用~29畳用、実際は4モデルしかない
日立のXJシリーズの場合、6畳用から29畳程度まで、11個のモデルが用意されています。しかし、最大能力で分類すれば、青線で区切った4つのモデルしかないことに気づきます。
カタログをよく読むと、青線を境界に室外機の大きさが変わったり、冷媒のガス管の径が変わったりしています。
同じ青枠の中なら、一番安いモデルを買うのがお買い得です。例えば18畳を買うのではなく、12畳用を買った方が、同じ性能の商品を安く買えるのです。
エアコンが細かく分かれている理由
なぜこんなに細かく分けるかというと、一言でいうと利益が出やすいからです。
とにかく共通設計にすると開発費が安くなります。エアコンを6畳用と8畳用でコンプレッサーの大きさ等を変えて別設計にすると、単純に開発費が倍かかります。部品を変えるだけの単純なことに思うかもしれませんが、部品を変えると新たに部品検査や完成品の性能検査が必要です。エアコンなら外気温を再現できる恒温室言われる設備で、何度もカタログの性能が出るか試験しているはずです。
一方でマーケティングサイドからはモデルを細分化したがります。他社が細かく分類している中で、自社だけモデルを絞り込むわけにいきません。開発側が共通設計で何とかしたのがこの結果だと思います。
微妙に性能が違う場合
今回、日立の例では6畳用と8畳用が全く同じ性能でした。他社では6畳用と8畳用の最大能力に微妙な違いがある場合があります。これでも同じものだと思って問題ありません。最大能力の違いは、ソフトで制御しているだけで基本的な性能は違いありません。
同じモデルか見分けるポイントは室外機の大きさです。室外が大きいほど熱交換器が大きくなり、エアコンの性能が変わります。室外機が同じで、最大能力が殆ど同じなら、同じモデルと考えてください。
カタログの畳数表記は過大?
エアコンのカタログ表記の畳数を算定する熱負荷は、1964年に選定されて以来見直しされていません(!)。みなさんも感覚で分かると思いますが、1964年当時の木造住宅は、気密性が低く今の住宅より大出力のエアコンが必要です。つまりカタログの畳数は、かなり過大なのです。
情報の非対称性を良いことに、オーバースペックなものを売りつける、営業あるあるの手法です。
電力中央研究所の報告書によると、建築に関する学会で、世間でスペックオーバーのエアコンが導入され、その結果電力消費が増えている実態が発表されています。エアコンもサイズと合わない過大なものを選択するとエネルギー効率が落ちるのです。
一方で、部屋の向きや気密性能で必要なエアコンの能力が変わるので、素人が最適な畳数を選ぶのは難しいです。そんな素人のために最適なエアコンを提案するツールが電力中央研究所から提供されいます。このツールを使えば完璧ですと言いたいのですが、非常に使いにくいです。まぁ、参考程度には使えます。
素人には最適なエアコン選びは難しいですが、畳数表記がi過大なのは間違いないです。
エアコンの買い方の結論
エアコンは以下のように買いましょう。
①カタログを見比べて畳数ごとで実際は同じ性能のモデルを特定する。
⇒今回の日立の例では、6畳用・10畳用・12畳用・20畳用以外は購入の選択肢から外れる
②同じ性能のモデル感を比較して、畳数で迷ったら小さめのものを選択する。
⇒1964年の木造建築の気密性を基に畳数設定されているので、少し小さめの畳数用のモデルを買うと丁度いい。